「Beyond Creation -永澤陽一の創造と革新」/神戸ファッション美術館

永澤陽一のファッション哲学と創造の軌跡。貴重な初期コレクションが集結【神戸ファッション美術館】

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2025年10月1日

永澤陽一のファッション哲学と創造の軌跡。貴重な初期コレクションが集結【神戸ファッション美術館】

神戸ファッション美術館にて、特別展「Beyond Creation ― 永澤陽一の創造と革新」が開催中です。

1980年代より独自の発想力と素材づかいで、時代の先端に挑み続けたファッションデザイナー・永澤陽一。

彼の想像力の源泉に迫る本展では、貴重な初期コレクションを一挙公開!
ファッションやデザイン好き必見の展覧会です。

時代の先端に挑み続けた
ファッションデザイナー・永澤陽一

特別展「Beyond Creation ― 永澤陽一の創造と革新」展示風景

1980年代より、ファッションのさまざまな分野で活躍の場を広げた永澤陽一。

「AEON」「無印良品」「ニューバランス」などの服飾を手がけ、「東京メトロ」などの制服も多数デザインしました。

1987年には、ファッションデザイナー・熊谷登喜夫(1947-87)のブランド「TOKIO KUMAGAI」のチーフデザイナーに就任。

靴のデザインやレディース全般、メンズカットソー、アクセサリーなどを担当しました。

永澤陽一「乾いた風に花が咲いたよ」2003年春夏コレクションより 神戸ファッション美術館所蔵

1991年、パリから帰国したのちに独立し、自身のブランド「YOICHI NAGASAWA」で東京コレクションやパリコレクションに参加。

現在は、金沢美術工芸大学名誉客員教授、国際ファッション専門職大学教授・学部長として、後進の育成にも力を注いでいます。

特別展「Beyond Creation ― 永澤陽一の創造と革新」展示風景

本展では、洋服170点以上、マネキン130体以上を展示しています。

高度なパターン技術とプリント技術によって、定番のギンガムチェックや花柄を未来的なデザインに再編集したコレクションを紹介。

また、パリの蚤の市で出会った銀のスプーンをヒントにノスタルジックな「過去の美」として表現した作品などが並びます。

永澤陽一の創造の軌跡を辿る華やかな会場は、まるでランウェイのような美しさです。

7つのテーマで捉える
「思考するデザイン」としての衣服

特別展「Beyond Creation ― 永澤陽一の創造と革新」展示風景

急速なデジタル技術の発展により、AIがデザインを学ぶ現代。

「創造の根幹がテクノロジーによって再編されつつある」と語る永澤は、「効率や最適解に頼らず、自らの感性と手を通して世界を捉え直す力が必要」だと説いています。

そこで本展では、永澤が提唱する「思考するデザイン」の哲学を、7つのテーマで紹介します。

永澤陽一「人魚姫」2006年春夏コレクションより 神戸ファッション美術館所蔵

「アート(造形の革新)」のコーナーに展示される、2006年の春夏コレクション「人魚姫」シリーズ。

海をイメージさせる色彩を使い、光の加減で表情が変化するような創りです。

人工髪を編み込み、波のように身体に沿わせることで立体的なフォルムを生み出した本作は、衣服を“第二の皮膚”として機能させる造形美を持ち、未来の部族(アバター)を想起させます。

永澤陽一「光と影」2000年春夏コレクションより 神戸ファッション美術館所蔵

2000年の春夏コレクション「光と影」は、フランスのピクニック文化と生活工芸としての「パニエ(籠)」へのオマージュから生まれたシリーズ。

ラバープリントを用いて印刷された「編みの錯覚」によって生み出された、立体感と透明感が印象的です。

このほか、「ノスタルジア(記憶のナラティブ)」をテーマにしたコーナーでは、2008年制作の《恐れと狂気》も展示されています。

“騎手が履くジョッパーズパンツを馬に履かせる”という逆転の発想により、人間中心の秩序を揺さぶる知的なアクションとして注目を集めています。

同時開催のコレクション展にも注目

コレクション展「靴と服と時代」展示風景

同時開催のコレクション展「靴と服と時代」も見逃せません。

ロココからアール・デコ、ディオール、現代のYOICHI NAGASAWAのシューズに至るまで。
神戸ファッション美術館が所蔵するさまざまな靴が、各時代の衣装とともに紹介されています。

コレクション展「靴と服と時代」展示風景

ミシンが導入される前の手刺繡の繊細な縫製や、現代のユニークなデザインの靴など、一度に鑑賞できるのが魅力です。

まとめ

永澤陽一「狩り」2004-05年秋冬コレクションより 神戸ファッション美術館所蔵

7つのテーマで展開される初期コレクションを通して、華やかな衣装が出来上がるまでの途方もない熱意と労力に触れることができました。

すべて原型から手作りされたという、ポージングまで計算されたマネキンが纏う作品が並ぶ本展は、まさに「生きた展覧会」。

ファッション好きはもちろん、アートや文化に興味がある方にもおすすめです。

神戸ファッション美術館で、永澤陽一の創造世界をぜひ体感してください。

Exhibition Information