わが家に洋食を広めた『食道楽』の世界/ガスミュージアム

明治期のガス調理器具と共に当時の食文化を紹介【ガスミュージアム】

2023年10月31日

わが家に洋食を広めた『食道楽』の世界/ガスミュージアム


(左)ガス灯館/(右)くらし館

ガスミュージアム(東京・小平市)は、都市ガス事業の歴史およびくらしとガスの関わりを紹介する歴史博物館です。

2棟の赤レンガ建物は、明治期に東京のガス事業で使われていた建物を移設復元したもの。今は、展示室として使用されています。

ガス灯館の2階にある企画展ギャラリーでは、明治期の日本に「洋食」を広めた小説『食道楽(しょくどうらく)』を紹介する展覧会が開催中です。

本展では、一世紀以上経ってもなお、現在の私たちの生活に参考となる『食道楽』について、同書のレシピの再現料理や、当時の調理道具、ガス調理道具とともに紹介します。

家庭料理の指南書であった『食道楽』


増補注釈『食道楽』全4巻 村井弦斎 1903-1904年

報知新聞の記者、また小説家として活躍した村井弦斎(むらいげんさい)によって書かれた小説『食道楽』。
同書は、今から120年前の1903年1月2日から12月27日までの360日間、報知新聞で連載した新聞小説です。

大食漢である大原という男性と親友の文士・中川、そして中川の妹で料理上手なお登和が主な登場人物で、物語は大原とお登和の恋愛を主に展開されていきます。

一見すると、清らかな恋愛を描いているようですが・・・なんと話が進むと大原の許嫁であるお代という女性が登場。

大原と恋人の関係であるお登和と大原の許嫁であるお代の女の闘いも描かれています。


『食道楽』登場人物紹介

これだけでも読み応えがありますが、ここで終わらないのが明治30年代のベストセラー作品。

個性豊かな登場人物の会話の中には、料理上手なお登和が、和洋中のさまざまな料理やお菓子を作り、それを兄・中川が料理や食生活のあり方、健康に関するうんちくを紹介する、とてもユニークな小説です。

食に関することと登場人物の恋愛模様も巧みに描き、誰にでもすんなり理解しやすい文章が読者の支持を得た小説『食道楽』。

現代の言葉で分かりやすくなった文庫本が販売されているほか、オリジナルの紙面は国立国会図書館デジタルコレクションで、続編とともに読むことができますよ。

100年以上前に活躍したガス調理器具も展示

くらしのなかで使われてきたさまざまなガス器具を、明治から現代にまでの一世紀半にわたり紹介するガスミュージアム。

本展では、100年以上前に活躍したガス調理器具もあわせて紹介します。


亥三号台付七輪 東京瓦斯株式会社 明治末期

「亥三号台付七輪」は、鍋釜などの調理道具を支える五徳(ごとく)と、コンロの外枠が一体となったシンプルなデザインのガス七輪です。明治末期に作成されました。

明治末期に作成された「亥三号台付七輪」は、デザインをほとんど変えることなく、1960年まで販売されていました。


英国フレッチャラッセル社製 ガスレンジ

くらし館の常設展示では、『食道楽』春の巻にある「大隈伯爵邸の台所」にあった物と同型のイギリス製のガスレンジを展示。


大隈伯爵邸台所の図 増補注釈『食道楽』春の巻より 1903年

明治時代、大隈重信伯爵邸などの大きな家では、このようなイギリス製のガスレンジで料理を作り、客人をもてなしていたと言います。

本展と一緒に、くらし館の常設展示も一緒に観ると新しい発見があるかもしれません。

常設展示のようすは動画でご紹介中▼

 

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『食道楽』に収録されているレシピを再現

600種類以上におよぶレシピが登場し、食材や調理道具の詳細な解説もあるなど、家庭料理への関心が高まっていた当時の人びとに驚きを与えた小説『食道楽』。

同書が注目された明治末期から大正時代には、家庭料理を学ぶ場として「料理教室」が各所で開設されるようになりました。

東京ガス(株)も、家庭料理の普及と家庭用ガス器具の紹介のため、1913年に料理教室を開設。なんと今年で110周年を迎えます。


『食道楽』再現料理「牛肉のシチゥ」

本展では、東京ガス料理教室の協力の下、『食道楽』に収録されている2つのレシピを再現して展示しています(実物の展示はありません)。

また、東京ガス料理教室110周年を記念し、連動企画として特別料理教室を12月に開催します。

『食道楽』のレシピを元に現代風にアレンジした「明治時代憧れたハイカラメニュー」を作りながら、食文化の歴史に触れることができる貴重な機会です。

詳しくは、東京ガス料理教室ホームページをご覧ください。

小説『食道楽』の作品世界から、明治時代の食文化と当時のガス調理器具について紹介する本展。

今では生活の一部で、その存在が当たり前となったガスについてや、グラタンやオムライスなどの洋食について、より深く知ることができますよ。

ガスミュージアムは入場無料!秋晴れが続き、過ごしやすくなった今、お子さんと一緒に「ガス」と「くらし」、また「食文化」について考えてみては?

Exhibition Information

展覧会名
わが家に洋食を広めた『食道楽』の世界
開催期間
2023年10月7日~12月24日 終了しました
会場
ガスミュージアム ガス灯館2階 ギャラリー
公式サイト
https://www.gasmuseum.jp/