河鍋暁斎 ―躍動する絵本/太田記念美術館

太田記念美術館で、河鍋暁斎の「絵本」を紹介。知られざる暁斎の絵本の魅力とは

2021年11月9日

河鍋暁斎 ―躍動する絵本/太田記念美術館

幕末から明治にかけて、狩野派でありながら浮世絵も数多く描いた絵師、河鍋暁斎(かわなべ きょうさい/1831-1889)。
近年、特に注目を集めており、全国各地の美術館で展覧会が開催されて、さまざまな肉筆画や版画が紹介されています。

スフマート Sfumart 太田記念美術館 河鍋暁斎 ―躍動する絵本 取材レポート
河鍋暁斎『狂斎画譜』(前期展示風景より)

そんな今注目の絵師・暁斎を紹介する本展では、人物や動物、妖怪などを力強い筆づかいで描いた暁斎の絵本を中心に展示。

『暁斎漫画』や『暁斎鈍画(どんが)』、『暁斎酔画(すいが)』など、代表的な絵本を取り上げ3つのコーナーに分けて紹介します。

※展覧会詳細はこちら

河鍋暁斎の絵本とは

1837年、河鍋暁斎は7歳の時に、浮世絵師である歌川国芳に入門しました。しかし、10歳の時には、日本絵画史上最大の画派である狩野派へ移り、そこで絵の修行に励みます。

20代後半から30代にかけては、世の中の出来事や事件、また風景を題材とした浮世絵版画を制作。その活動は、狩野派の絵師というよりは、浮世絵師に近いものでした。

スフマート Sfumart 太田記念美術館 河鍋暁斎 ―躍動する絵本 取材レポート
河鍋暁斎『狂斎画譜』(前期展示風景より)

暁斎は30歳の時に、絵を主体とした「絵本」として『狂斎画譜(きょうさいがふ)』を刊行します。

本作には、町で暮らす人びとや七福神などの神様、さらには鬼や天狗などの妖怪が、楽しげな表情を浮かべてユーモラスに動き回る姿が描かれています。

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河鍋暁斎『暁斎酔画』(前期展示風景より)

暁斎の絵本は一般的な浮世絵版画よりも小さいA5サイズ以下で、その画面内には、大勢の人びとの姿がみっちりと描き込まれています。

よく観てみると、祭りや儀式、あるいは、働いている人やくつろいでいる人など・・・

さまざまな人びとの姿が、暁斎のいきいきとした筆づかいで、表情豊かに表現されています。お持ちの方は、ぜひ単眼鏡でじっくりと観てみてください。

暁斎が好んだモチーフ・がいこつ

暁斎はがいこつを描くことを好んでおり、絵本の中にも多く登場します。

医学書を参考にしたかのような正確な骨格描写も、もちろん見どころですが、小さな画面いっぱいに描かれたがいこつたちのポージングに注目です。

スフマート Sfumart 太田記念美術館 河鍋暁斎 ―躍動する絵本 取材レポート
河鍋暁斎『暁斎漫画』(前期展示風景より)

右側には、あぐらをかいて背伸びをするがいこつがいたり、不思議なダンスをしていたりと、表情のないはずなのに「いきいき」とした表情を見せているところに、思わずクスッと笑ってしまいます。

かつての師匠、国芳とのエピソードを描いた絵本も

スフマート Sfumart 太田記念美術館 河鍋暁斎 ―躍動する絵本 取材レポート
瓜生政和著・河鍋暁斎画『暁斎画談 外篇』巻之上(前期展示風景より)

本作は、7歳の時に弟子入りした浮世絵師・歌川国芳の作業場を描いたものです。右側にいるのが国芳で、幼い暁斎に対して、絵の手ほどきをしています。

ところで、国芳といえば、大の猫好きで知られています。

本作も国芳のまわりに注目してみると、たくさんの猫が! それも、国芳の描いている作品の上にドンと乗っかって、自由に過ごしているようすがコミカルに描かれています。

とても和む本作は、編集部のお気に入りの一作でもあります。

 

これまで、都内でも暁斎の作品を紹介する展覧会は、数多く開催されていますが、冊子状である絵本は展示しづらいこともあり、その一部しか紹介されていませんでした。

そのため、暁斎の「絵本」にだけ注目して紹介する展覧会は、とても珍しいとのこと。本展で展示されている絵本は、全部で13種類。その総ページ数は420ページを超えています。

前後期に分けてそのすべてを展示することで、「画鬼」と称された暁斎に迫る展覧会です。ふだん、なかなか観ることのできない貴重な機会となっているので、ぜひお近くの方は足を運んでみてください。

瓜生政和著・河鍋暁斎画
『暁斎画談 内篇』巻之上
(前期展示風景より)

河鍋暁斎『暁斎漫画』
(前期展示風景より)

河鍋暁斎 ―躍動する絵本 前期展示風景より

瓜生政和著・河鍋暁斎画
『暁斎画談 外篇』巻之上
(前期展示風景より)

Exhibition Information

展覧会名
河鍋暁斎 ―躍動する絵本
開催期間
2021年10月29日~12月19日 終了しました
会場
太田記念美術館
公式サイト
https://www.ukiyoe-ota-muse.jp/
注意事項

前期 :10月29日~11月23日
後期 :11月27日~12月19日
※前後期で全点展示替え