風刺画/10分でわかるアート
2023年3月29日
ずっとつながる えほんの世界―偕成社 子どもの本展―/神戸ファッション美術館

6月20日から8月30日まで、神戸ファッション美術館にて『ずっとつながるえほんの世界 偕成社子どもの本展』が開催されています。
株式会社偕成社は、1936年に創業され、数々の子どもの本を生み出してきた児童書の老舗出版社です。
そんな偕成社の絵本の魅力がたっぷり詰まった展覧会に、一足先に行ってきました。

エリック・カールの代表作『はらぺこあおむし』は、世界的に有名な絵本です。
記念すべき初版は、なんと日本で印刷されたということを、ご存じですか?
『はらぺこあおむし』の絵本は、穴あきの仕掛けがあったり、ページの大きさがさまざまだったりします。
『はらぺこあおむし』の編集者だったアン・ベネデュースは、そうした仕掛け絵本を印刷してくれる会社を、アメリカで見つけることができなかったそうです。
そこでアンは日本を訪問した時に、当時の偕成社の専務・今村廣(のちの2代目社長)に相談をしました。
今村は、この絵本は素晴らしいと考え、心当たりのある製本所に声をかけて、日本の会社で印刷されたのだそうです。
その7年後の1976年に、日本でも翻訳出版され、今なお時代や国を超えて愛され続けています。

長らく愛されていた1976年初刊版ですが、その後エリック・カールが絵を描き直したため、1989年はちょっとだけ絵が変わっているそうですよ。
展覧会では、新旧比較コーナーも用意されているので、間違い探しのように、新旧バージョンの違いを比べてみることができます。ぜひ、会場で確かめてみてくださいね。

「ノンタン」シリーズも間違いなく、偕成社が生んだ名作シリーズだと言えるでしょう。
かわいらしい白ネコのイメージが強いノンタンですが、最初はキツネの予定だったのだそうです。
というのも、著者のキヨノサチコは、キツネが悪者になっている童話が多いことが不満で、ぜひ、かわいらしいキツネを主人公にしたいと思っていたからなのですって。
けれども、偕成社の編集者の提案で、主人公は子どもたちにとって、より身近な白ネコになりました。

ちなみに、白ネコになったばかりの時の名前は「ドラくん」だったらしいですよ。
けれども、子どもがもっと言いやすい名前にしようと、「ノンタン」という今の名前に変更したんだそうです。
ノンタンって響きがとてもカワイイですよね。ドラくんだったら、ここまで人気シリーズにはならなかったかもしれません。
会場には、ノンタンと撮影できるフォトスポットも用意されていました。こちらでぜひ、子どもと記念撮影してみてくださいね。

「からすのパンやさん」シリーズも、日本を代表する名作絵本と言って良いと思います。
そんなかこさとしの原点は、子どもたちに読む紙芝居でした。

かこさとしは、会社務めの傍ら、自宅近くの子ども会の運営に携わり、そこで徹夜で作り上げた紙芝居を読み聞かせていたのだそうです。
ところが、子どもというのは正直なもので、紙芝居がちょっとでも退屈だと、すぐにどこかに遊びに消えていってしまうそうです。
そこで、子どもが退屈しない紙芝居を作ってやろうと、何度も何度も描き直した体験が、後の名作絵本につながりました。

会場には、『どろぼうがっこう』という絵本の原点となる紙芝居の原画も展示されていました。
これは、かこさとしファンには必見です!

展覧会の最後には、絵本を自由に読めるコーナーが広々と設けられています。
偕成社の名作の絵本や、児童書がズラリと並んでいるんですよ。
どれも自由に手に取って読むことができますから、子どもと展覧会に来ても、しばらく楽しむことができますね。

会場を出たら、偕成社の本やグッズを購入できるコーナーも設けられています。この展覧会で出会った新しい本をぜひ、子どもに買ってあげてくださいね。
そして、お家に帰ったら、展覧会のことを思い出しながら、読んであげてみてください。

これから夏休みになりますから、ぜひ、子どもと一緒に絵本の展覧会に出かけてみてはいかがでしょうか。
静かにゆっくり楽しむことができますから、お父さん、お母さんも疲れにくいのではと思います。
絵本は、世界を広げてくれます。子どもが自分で体験できる冒険はほんのちょっとですが、絵本ならば、怪しいどろぼうの学校をのぞいたり、地下の国に行ってみたり、どんなドキドキの体験もできるんです。
そうして、子どもの頃に体験した冒険は、子どもたちの心を豊かにしてくれるものだと思います。
この展覧会が、そんな素晴らしい絵本体験のきっかけになりますように。