中原淳一と人形/横浜人形の家

人形作家・中原淳一に迫る展覧会が10月16日まで開催【横浜人形の家】

2022年8月16日

中原淳一と人形/横浜人形の家

雑誌編集やファッションデザインなど、多岐に渡る表現で当時の女性たちのあこがれの的であった作家、中原淳一(1913-1983)。1946年に独自の女性誌「それいゆ」を創刊、続く「ひまわり」「ジュニアそれいゆ」で戦後の女性たちに夢と「美しく生きること」の道筋を示しました。

ファッションデザインやヘアメイク、イラストレーションなど幅広いジャンルで知られている中原淳一ですが、そのデビューは人形制作であったことはご存じでしょうか。

現在、横浜人形の家では人形作家・中原淳一にフォーカスを当てた展覧会「中原淳一と人形」展が開催中です。

本展では、作家自らが制作した初期から晩年までの14体の人形を展示。さらに、ファッションデザイナーや人形研究者といった多彩な分野で活躍する5人から見た「淳一作品の魅力」も紹介します。

中原淳一と人形

日本のファッションをはじめ、幅広い分野で時代をリードする先駆的な存在であった中原淳一。淳一のデビューが実は人形制作であったことは広く知られていません。

淳一は1913年、香川県に兄3人、姉3人に続く四男として生まれました。淳一が2歳の時、父の仕事の都合により徳島県に移住し、この地で11歳まで過ごします。徳島ではときどき街中で行われるあやつり人形の人形芝居を見ていたといいます。

その後、姉の転校に伴い広島市に移り住むことになった淳一。この頃、手芸店のウインドウで偶然目にした抒情人形(じょじょうにんぎょう)に刺激され、針金と毛糸を使って生まれて初めて人形を制作します。


辻音楽師 昭和5年/1930年制作 ©JUNICHI NAKAHARA / HIMAWARIYA

「辻音楽師」は、淳一が10代の頃に制作した人形であり、現在見ることのできる人形作品の中でもっとも古い作品です。老いたシャンソン歌手をイメージさせる本作。顔は紙粘土、コスチュームはウールのはぎれといった素材で作られています。


(左から)人形Ⅴ-01 昭和37年/1962年制作、人形Ⅴ-02 昭和38年/1963年制作、三人のスリ 昭和37年/1962年制作 ©JUNICHI NAKAHARA / HIMAWARIYA

本展では貴重な初期作品から晩年の作品まで、作家自らが制作した14体の人形作品を展示。これらの人形作品から、淳一が生涯をかけて多くの人びとに伝えようとした「人形を作ること」の魅力を紹介します。

各分野で活躍する5人の「お気に入りの淳一作品」も紹介

本展では、アーティストやファッションデザイナー、研究家など各分野で活躍する5人が選ぶ「私のお気に入り淳一作品」もあわせて展示。本記事では、2名のお気に入り作品をピックアップして紹介します♪

増田セバスチャン(アーティスト)

きゃりーぱみゅぱみゅ「PONPONPON」MV美術、KAWAII MONSTER CAFEプロデュースなど、世界に「Kawaii文化」が知られるきっかけを作ったアーティスト、増田セバスチャン。とくに増田が注目するのは《表紙原画「それいゆ」第37号》です。


(左)表紙原画「それいゆ」第37号 1956年 ©JUNICHI NAKAHARA / HIMAWARIYA

大きな瞳の少女が印象的な本作。中でも増田は少女に抱かれている子猫にスポットを当てて紹介しています。

アーティストが描いた動物の絵を鑑賞する際、その動物のどの部分を抽出して描いてのか観察しているという増田。そうすることでまた違った作品に見えるかもしれないと語っています。

宇山あゆみ(人形作家/コレクター)

「昭和メルヘン」をテーマに創作を行い、昭和の少女洋品・生活洋品のコレクターでもある人形作家、宇山あゆみ。“中原淳一グッズ”は今まで30年近く骨董市に通い、少しずつ集めてきたといいます。


(左)「赤い着物の女の子」1963年 ©JUNICHI NAKAHARA / HIMAWARIYA

彼女が選ぶお気に入りの淳一作品は「赤い着物の女の子」です。宇山は本作について、イラストレーターとしてだけではなく、モデルのヘアメイクを手がけたり、ファッションデザイナーなどマルチな才能を見せた中原淳一の「総合芸術作品」であると紹介しています。


©JUNICHI NAKAHARA / HIMAWARIYA

また本展では、宇山がコレクションする“中原淳一グッズ”を展示。彼女のコレクションを通して中原淳一のデザインワークの魅力にも迫ります。

淳一デザインをまとった「現代のお人形」も展示!

日本のファッションデザイナーのパイオニアである中原淳一は、現代のファッション界に大きな影響を与えた存在です。そんな淳一デザインの洋服をまとった現代の人形たちも展示されています。


©JUNICHI NAKAHARA / HIMAWARIYA

「現代のお人形」コーナーのみ写真撮影OK!皆さんも「お気に入りの淳一デザインをまとった人形」を見つけて、SNSで紹介してみてはいかがでしょうか♪

 

中原淳一と人形の深い関係性を紹介する本展。ファッションデザイナーや雑誌編集などで活躍していたことは知っていましたが、人形作家・中原淳一について知ることができるのはとても新鮮でした。

展示されている原画に注目してみると、少女や少年が人形を持っている作品も多く見られます。淳一デザインの根底に「人形」があったことがうかがえました。


©JUNICHI NAKAHARA / HIMAWARIYA

1階ミュージアムショップでは、広尾にある中原淳一ショップ「それいゆ」のオフィシャルグッズを、本展会期中限定で販売しています。展示と一緒にミュージアムショップも楽しんでみてくださいね◎

Exhibition Information

展覧会名
中原淳一と人形
開催期間
2022年7月16日~10月16日 終了しました
会場
横浜人形の家 3階 企画展示室
公式サイト
https://www.doll-museum.jp/
注意事項

※本展は一部を除き撮影禁止です。