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2024年11月1日
現代のやきもの 思考するかたち/菊池寛実記念 智美術館
1月3日より、東京・虎ノ門にある菊池寛実記念 智美術館にて「現代のやきもの 思考するかたち」展が開催されています。この展示は、同館の創設者である菊池智のコレクションから現代陶芸の優品を51点紹介するものです。
展示会場の入り口でまず目にするのは、木野智史・作の「颪(螺旋)」(2019)。
細い帯が渦を巻くような、重力を感じさせない軽やかな造形が印象的です。奥から手前へと広がる形は、あらかじめロクロで作った円状の帯を、同じ素材で作った土台に載せて立体的な形状になるよう固定・乾燥させて作られたとのこと。
最初の展示室は、中央に川のような形の展示台が置かれ、ほの暗い中で作品がライトアップされる静謐で美しい空間です。
展示室に足を踏み入れると、栗木達介・作「方盤 三ツのバリエーション その一~その三」(1982)が目を惹きます。
3点の四角い方盤が並び、右から左の盤へと目線を移していくと、自分の視点だけがどんどん上がっていくかのような錯覚を覚えます。それは、盤の縁がどんどん内側へ傾斜していくため。全ての盤に同じ模様が描かれているのも錯覚を生むのに一役買っていて、まるでトリックアートのような楽しい作品です。
他にもユーモラスな作品として、辻清明・作「信楽陶缶、磁器土陶缶」(1982)があります。
「陶缶」というタイトルの通り、蓋の空いた缶の形をした器が3つ並んでいます。作者はパイナップル缶から着想を得てこの作品を作ったそうで、隣に展示されている「信楽ステッキ」「信楽帽子」とともに、日常を切り取ったような作品群です。
深見陶治・作「盤 澄」(1995)は、青磁の皿の縁がめくれあがったような形になり、その頂点から一本の線が反対側の縁に向かって伸びています。
その線は、静謐な湖を通る舟の道筋のようにも、空を駆ける飛行機雲のようにも見えるでしょう。透明感のある青磁がもたらす静けさと、立ち上がる皿の縁という動きが調和した作品です。
つづく展示室は、赤を基調とした空間です。深緑色の壁を基調とした先ほどの展示室とは一転し、陶土を焼く炎を思わせるドラマチックで力強い印象を感じさせます。
大塚茂吉・作「耳飾りの女」(2006)は、テラコッタ(素焼き)で作られた女性の頭部です。
ふっくらとした頬の量感、きりりとした眼窩から鼻にかけての線と、立体的・平面的な美しさが両立しています。元々は画家として活動し、留学先のイタリアでテラコッタに出会い陶芸へ転向した作者の来歴が作風から感じられます。
側面からにじみ出る光が美しい白磁の器、新里明土・作「光器」(2014)も非常に印象的でした。
この作品は、ロクロで成形した器を削って成形した後、表面に透かし彫りを施してできた穴に透明な釉薬を流し込んで制作されているそうです。点描が集まった光の帯がらせん状に器を取り巻き、アシンメトリーな器の形状が作品の印象を有機的なものにしています。
最後の展示室は、川上力三による3点の作品が展示されており、まるでひとつのインスタレーション作品のようです。
クッションのような土台の上に金色の椅子が光る「座」(1981)は、椅子に象徴される「権力」をモチーフにしたものです。
椅子のきらびやかさとは対照的な、ふわふわした頼りない土台が、権力の脆さを想起させます。
展示作品はどれも土が素材という共通点はあれど、用いられた技法や、作家が作品を通じて表現したものはそれぞれにみな異なります。
現代陶芸がいかに豊かな世界かを味わえる本展は、「焼きものって、要するに器とか皿でしょ?」という方にこそ足を運んでいただきたい展示です。
「現代のやきもの 思考するかたち」展は3月19日(日)まで、智美術館にて開催中です。