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クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
暑い夏の怪談に欠かせない存在である「妖怪」。
怪しくもおもしろおかしい存在である妖怪は、美術作品以外のも多くのメディアで描かれています。
今回の「10分でわかるアート」では、今もなお人気なモチーフである「妖怪」について詳しくご紹介していきます。
「妖怪」や「鬼」が日本の絵画史上で登場するのは、平安時代末の12世紀頃からと言われています。
この時期に描かれたもので特に有名なのは、邪鬼を退治する神々を描いた奈良国立博物館が所蔵する国宝《辟邪絵(へきじゃえ)》です。
国宝《辟邪絵》は、中国で信仰されていた「疫鬼(えっき)」という邪鬼をこらしめ、退散させる善神を表したものです。
画面いっぱいに描かれた大きな「神虫」は、カイコです。カイコは、昔から不思議な力を持つ虫として知られていました。
バリバリと鬼を食べるさまは、なかなかに迫力がありますね。
他にも国宝《辟邪絵》には、中国の民間信仰で伝わる魔除けの神・鍾馗(しょうき)などの姿も!
日本独自の発想というよりは、中国画を元にして描かれたものだと言われています。
絵巻物の制作が盛んになる中世期。妖怪も世間で人気のあった「御伽草子(おときぞうし)」を題材とした「御伽草子絵巻」に登場するようになります。
御伽草子絵巻で有名な作品は、《酒呑童子絵巻》や《土蜘蛛草紙絵巻》など。
どちらも英雄が妖怪を退治する武勇伝を描いたものです。
ここで描かれた妖怪の表情を見てみると、12世紀までの恐ろしいバケモノの姿ではなく、英雄にこらしめられて弱々しい姿で表現されています。
また、人びとに使われた古道具たちが妖怪化する《付喪神絵巻》を見てみると、妖怪がより親しみのある姿で描かれています。中世期あたりから、妖怪は「恐ろしい」ものではなく、「怪しく」「おもしろおかしい」ものとして捉えられていることが、良くわかりますね。
「妖怪浮世絵師」として知られている鳥山石燕(とりやませきえん、1712-1788)。
美人画の名手である喜多川歌麿の師匠に当たる人物です。
石燕は、従来の妖怪絵巻物や御伽草子にもとづきつつ、伝承に新たなアレンジを加えて200種類もの妖怪を記した妖怪百科事典、版本『画図百鬼夜行』を出版します。
同書は、江戸庶民の心を掴みベストセラーとなりました。
『画図百鬼夜行』は、江戸後期に活躍する歌川豊国や葛飾北斎、歌川国芳、また「最後の浮世絵師」である月岡芳年といった絵師たちの手本になったのだそう。
石燕による「妖怪」の姿は、後世の絵師たちに多大なる影響を与えました。
『百鬼夜行絵巻』
「土佐派」を代表する絵師・土佐光信が描いた『百鬼夜行絵巻』。
室町時代にはじまり、江戸時代にくり返し描かれてきた妖怪たちが、闇夜を愉快に行進するようすを描いた作品です。
特に、大徳寺真珠庵が持つ重要文化財『百鬼夜行絵巻』は、現存最古のものであり、源流とされています。
『百物語』シリーズ
浮世絵にも妖怪は多く描かれています。
こちらは、葛飾北斎の描いた『百物語』シリーズより、四谷怪談でおなじみのお岩さんを描いたもの。
本作のタイトルである「百物語」とは、人びとが夜に集まり、怪談100話を話し終えると、本物の怪異が現れるとする江戸時代に流行った怪談イベントです。
《相馬の古内裏》
歌川国芳の《相馬の古内裏》のがしゃどくろも有名ですね。
相馬の古内裏とは、相馬小次郎こと平将門が下総国(現在の千葉県北部と茨城県南西部)に建てた屋敷で、将門の乱の際に荒れ果ててしまっていた廃屋のことです。
がしゃどくろは、妖術を授かった将門の遺児である滝夜叉姫が呼び出しています。
美術の世界でもなじみ深いモチーフのひとつである「妖怪」について、詳しくご紹介しました。
夏になると、多くの美術館で妖怪を描いた作品が展示されます。
ここで得た知識を元に、作品を鑑賞してみては?
より深く作品を知ることができるかもしれませんよ。
【参考書籍】
・矢島新 監修『マンガでわかる「日本絵画」のテーマ 画題がわかれば美術展ももっともっと愉しくなる!』株式会社誠文堂新光社 2019年
・和田京子『妖怪萬画 Vol.1 絵師たちの競演』株式会社青幻舎 2012年
・和田京子『妖怪萬画 Vol.2 絵師たちの競演』株式会社青幻舎 2012年
・高田衛 監修『鳥山石燕 画図百鬼夜行』株式会社国書刊行社 1992年<\span>
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