W.ユージン・スミスとニューヨーク/東京都写真美術館

W. ユージン・スミスの個展が恵比寿で開催中【東京都写真美術館】

2026年5月4日

W. ユージン・スミスの個展が恵比寿で開催中【東京都写真美術館】

W. ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代 展示風景より

20世紀のドキュメンタリー写真を代表するアメリカの写真家W. ユージン・スミスの個展が、東京都写真美術館にて開催中です。

ニューヨークに住んでいた「ロフトの時代」を中心に、スミス作品の新たな魅力に迫ります。

「ロフトの時代」に焦点を当てる

親の影響で幼少期より写真に親しんだスミスは、地元紙での活動を経て、1940年代から本格的に報道写真に取り組むようになりました。

第二次世界大戦中にはグラフ雑誌『ライフ』の特派員として沖縄やサイパンなどの激戦地を取材。

戦後も同誌を中心に人びとの生活に密着した作品を発表し、フォト・エッセイの第一人者として広く知られています。


W. ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代 展示風景より

本展では、スミスがニューヨーク・マンハッタンの通称「ロフト」で過ごした時期にフォーカス。多くのアーティストが集ったロフトは、スミスが新たな撮影や表現を追求した場所でした。


W. ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代 展示風景より

マンハッタンの街並みを定点的に記録した〈私の窓から時々見ると…〉。

それまで自ら取材先へ行き撮影していたスミス。ロフト時代になると日常の断片を受動的に見つめ、記録しました。初期作との撮影スタイルの違いも比較してみてくださいね。

記録から表現へ
大きく変わった写真観

部屋から見下ろすマンハッタンの街並み、ジャンルを超えたアーティストとの交流。

ロフトの時代は、それまで報道的な視点で写真を「記録」していたスミスの写真観を、芸術的な「表現」へと押し広げていきました。


W. ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代 展示風景より

ロフトの時代の作品と共に、当時スミスが書き残した言葉やスケッチ、新聞の切り抜きなどが貼られていたロフトの壁や、流れていた音楽も展示室で再現されています。

ジャーナリズムへの回帰

10年以上のロフトの時代を経て、スミスはジャーナリズムへ立ち戻ります。

自身で企画・構成した回顧展「Let Truth Be the Prejudice」(1971年、ジューイッシュ・ミュージアム、ニューヨーク)も開催。


W. ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代 展示風景より

真実とは、ジャーナリズムとは何か。写真とテキストを並べた構成によって、スミスはフォト・エッセイの理念を自ら再構築しました。

東京都写真美術館では、当時展示された約600点のうち、約500点が所蔵されています。

本展では、当時の展示の一部を再現し、報道に関わるスミスの思想に迫ります。

〈水俣〉シリーズ

「Let Truth Be the Prejudice」展を経て、スミスは「報道と芸術表現は本来切り離せない」という確信をもちます。

そこから制作されたのが〈水俣〉シリーズ。


W. ユージン・スミス 展示風景〈水俣〉より 東京都写真美術館蔵 ©Aileen Mioko Smith

社会問題として真実を伝える報道性と、ロフトの時代に培われた芸術的感性が交差するシリーズです。

根深い問題がある地域にも日常がある。自身が伝えたいことだけを写真に収めるのではなく、ありのままを捉え、鑑賞者に思考をゆだねてみる。

スミスの写真からは、報道写真家として、そして芸術家としてのプライドが伺えます。

本展は、6月7日まで。ロフトの時代にフォーカスした展覧会は、日本では初とのこと。この機会をお見逃しなく。

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