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2024年11月1日
「10分でわかるアート」は、世界中の有名な美術家たちや、美術用語などを分かりやすく紹介する連載コラムです。
作家たちのクスっと笑えてしまうエピソードや、なるほど!と、思わず人に話したくなってしまうちょっとした知識など。さまざまな切り口で、有名な作家について分かりやすく簡単に知ってもらうことを目的としています。
今回は、バロック期に黄金時代を迎えた「スペイン美術」について詳しくご紹介。
「この作品を作った作家についてもう少し知りたい!」「美術用語が難しくてわからない・・・」そんな方のヒントになれば幸いです。
スペイン美術は17世紀から20世紀にかけて一大発展期を迎えました。
17世紀のスペインでは、反宗教的改革によりカトリック教会が権力を取り戻し、宗教画がよく描かれるようになります。
エル・グレゴ《盲人の治癒》1570年代
主にカトリックに密接に結びついて発展し、たスペイン美術は、自然主義、表現主義、人間中心主義的な傾向が強いことが特徴とされています。
エル・グレコやディエゴ・ベラスケス、建築家アントニ・ガウディ、また20世紀スペインを代表する画家パブロ・ピカソなどがスペイン美術を代表するアーティストです。
スペイン美術は16世紀末から17世紀のバロック期が黄金時代と言われています。
カトリックとプロテスタントが宗教戦争を行っていたこの時代。
プロテスタントは偶像崇拝にあたるので、宗教画を描くことは禁止していましたが、逆にカトリックは宗教画を布教活動の一つにとらえていました。
その後スペインではカトリック教会が大きな権力を持ち、その影響から宗教画が多く描かれるようになります。
ディエゴ・ベラスケス《フェリペ4世騎馬像》1635年頃
1621年、政治への関心が薄いが、芸術への関心が高いフェリペ4世が即位します。
フェリペ4世はベラスケスを宮廷画家にするなど、芸術の発展に力を注ぎました。
同様にヨーロッパの歴史ある王朝、ハプスブルク家は強大な権力を持ち、その財力を元に美術品をコレクションし、画家たちのパトロンになるなど、スペイン美術の発展に貢献しました。
エル・グレコ《オルガス伯の埋葬》1586年ー1588年 油彩 サント・トメ教会
エル・グレコ(1541-1614)はマニエリスムを代表する画家です。
エル・グレコの名前が「ギリシャから来た人」ということを意味するように、現在のギリシャ、クレタ島(当時はヴェネツィア共和国の支配下)出身の画家です。
ビザンティン美術の影響を受け、イコン画を描いていたエル・グレゴ。ヴェネツィア、ローマと各地を転々としますが、最終的にはスペインのトレドで活躍しました。
本作は14世紀前半、サント・トメ教会に多額の寄付をしたオルガス伯爵が亡くなり、聖人たちが降臨し埋葬したという伝説の一場面が描かれたもの。
エル・グレコの最高傑作作品と言われています。
ディエゴ・ベラスケス《ラス・メニーナス》1656年 油彩
ディエゴ・ベラスケス(1599-1660)は、スペイン絵画の黄金時代であった17世紀を代表する画家で、スペインの貴族の子として生まれました。
両親は幼いころから絵が得意であったベラスケスの才能を伸ばすために、画家フランシスコ・パチェーコ(1564-1644)に弟子入りさせます。
その後プラド美術館のコレクションを築いたフェリペ4世から肖像画を依頼されたベラスケスは、フェリペ4世に気に入られ、宮廷画家となりました。
《ラス・メニーナス》はスペイン語で「女官たち」を意味しており、中央に描かれているのはスペインの王女、マルガリータ王女と王女の侍女たち。
奥の鏡には王女の両親である王妃マリアナとフェリペ4世が描かれ、キャンバスの奥にはベラスケス自身が描かれています。
ディエゴ・ベラスケスについて詳しく知りたい方はこちら
アントニ・ガウディ(1852-1926)は、スペインを代表する建築家で、スペインのカルターニャ地方の銅細工師の家に生まれました。
ガウディが手掛けた建築は曲線を生かした奇抜なデザインが多く、その建造物は7つの世界遺産に登録されています。
《サグラダ・ファミリア》含め、グエル公園など今でも観光名所として有名なところばかり!
《サグラダ・ファミリア》は建設途中にガウディが急逝したため未完ですが、現在は最先端の技術で工事が継続され、順調に進めば2026年に完成する予定です。
アントニ・ガウディについて詳しく知りたい方はこちら
スペイン北部のフエンデトードス村出身のフランソワ・デ・ゴヤ(1746-1828)。
父親は鍍金(メッキ)師であり、裕福ではなかったものの芸術を愛する家庭で育ちました。
国王カルロス4世の首席宮廷画家にまでになったゴヤですが、そんな彼の代表作《裸のマハ》は当時の人びとからすると問題作でした。
フランソワ・デ・ゴヤ《裸のマハ》1797年ー1800年頃 油彩
西洋では、19世紀に入るまでヴィーナスなど神話の登場人物の裸婦画以外は禁断とされていたのですが、本作は初めて生身の女性の裸婦を描いたことで問題作として話題に。
問題作として取り扱われることを危惧してか、同じポーズ、構図、大きさで洋服を着ているバージョンの《着衣のマハ》も描いています。
フランソワ・デ・ゴヤ《着衣のマハ》1797年ー1803年頃 油彩
また、黄金時代の画家ではありませんが、パブロ・ピカソ(1881-1973)もスペイン美術を代表する画家です。
ジョルジュ・ブラック(1882-1963)とともに新たな絵画様式キュビズムを生み出したピカソ。
《泣く女》やナチス・ドイツ軍のスペイン進撃に対する抗議のために描いた《ゲルニカ》などを描いており、日本では箱根の彫刻の森美術館やヨックモックミュージアムが、ピカソの作品を収蔵しています。
カトリック教会の影響が大きく、近隣ヨーロッパの影響を受けて発展していったスペイン美術。
それにはパトロンたちの支援がありながら、それぞれの表現を続ける画家たちの姿がありました。
本記事をきっかけにスペイン美術を楽しんでもらえたらと思います。
【参考書籍】
・大友義博『西洋絵画BEST100』株式会社宝島社 2015年
・トキオ・ナレッジ『大人の西洋美術常識』株式会社宝島社 2016年
・小坂眞吾『小学館の図鑑NEOアート 図解 はじめての絵画』株式会社小学館 2023年