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クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
今回の「10分でわかるアート」では、ナビ派の一員であり、独自の色彩表現で人びとを魅了する画家「ピエール・ボナール(1867-1947)」について詳しくご紹介します。
ピエール・ボナールは、1867年にフランスのブルジョワ階級の家に生まれました。
20歳で大学の法学部に進学。法律を学ぶかたわら、美術大学の夜間部にも通います。
美術学校でモーリス・ドニやポール・セリュジェら画家仲間に出会い、後にナビ派を創設。
法学士の資格を取得しましたが、美術の道に進むことを決意します。
26歳のときに後に妻となるマリア・ブールサン(通称マルト)に出会います。
マルトは、ボナールにとってまさに理想の女性でした。マルトをモデルにした作品も数多く描いています。
ボナールは日本美術に感銘を受け、《庭の女性たち》、《乳母たちの散歩、辻馬車の列》など、掛軸や屏風を彷彿とさせる縦長の作品も制作しました。
1900年に入ってからは、南フランスの地にいくつかアトリエを持ったというボナール。
室内情景や日常風景など身近なものを題材に、温かみのある色彩表現で平面的でありながら光を捉えた絵画を描き続けました。
パリのインテリたちのための上品な生活様式を発信する月刊誌の宣伝用ポスターとして制作されました。
当時主流となっていたアール・ヌーヴォーと較べ、パリ風の小洒落た雰囲気と表面的で大胆な構図が異彩を放っています。
ポスター制作におけるリトグラフ制作工程が、後の絵画制作の役に立ったとボナールは語っています。
この作品の舞台はセーヌ河畔の風景です。
牧歌的でのどかな田園風景の中でボナールの妻マルトと愛犬のユビュがくつろいでおり、穏やかな時間が流れています。
ボナールは1909年に南フランスに訪れたことをきっかけに、暖色を使った豊かな色彩表現に開眼しました。
また、この作品は晩年のクロード・モネの作品に触発されて制作されました。
柔らかな光がさしこむ食卓で、猫を抱いた少女が猫を抱きながら食事を待っている様子を描いた作品。
右下の果物が一部が切断されて描かれていますが、俯瞰的に捉えると、見るものとの関係性がいっそう親密になります。
この手法は、ボナールが浮世絵を学んだことに由来しています。
穏やかな色彩に散りばめられた鮮やかな色彩が小気味よく全体を引き締めており、ボナールの卓越した技量が垣間見える作品です。
登記所で働きながらエコール・デ・ボザール(官立美術学校)で学んでいたボナールは、1889年にポスターのデザインコンクールで優勝します。
優勝作品のポスター《フランス・シャンパーニュ》のシャンパンの泡は、葛飾北斎の作品からインスピレーションを得て描かれています。
このポスターはパリの街中に貼られ、ボナールは注目の的に。そのおかげか、グラフィックデザイナーとしての仕事には困りませんでした。
ポスターを芸術の域に高めた画家といえば、ロートレックの名が挙げられます。
ロートレックはボナールのポスターを目にし、影響を受けました。
ボナールは1891年にロートレックと出会っています。ボナールはロートレックに印刷の仕事も紹介していたそうです。
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精神的に不安定だったマルトの療養もあって、マルトとの結婚後は南フランスに購入した別荘を拠点としながら、自然豊かな地でのスローライフを好んだボナール。
制作においては写真を撮影し、色をノートにメモ。メモしたノートをアトリエで開いて制作にとりかかるという手法をとっていました。
最初に目にしたときに感じた印象や感覚を大事にしており、その感覚を表現するために、制作にとりかかるまでに一定の時間を空けていたそうです。
マルトを生涯愛したボナールは、彼女の死後も400点近い作品を描いています。
あたたかな色彩に満ち、妻マルトへの愛に溢れた作品の数々を見ると、ボナールは幸せな生涯を過ごしたのではないかと思えてなりません。
画家仲間からは無口で物静かと評されていましたが、ナビ派の仲間をはじめ、クロード・モネやアンリ・マティスなどとも親交があったようで、友人も多かったようです。
ナビ派の中でも、特に日本美術に興味と関心を抱いた人物ということで、日本人にとって親しみやすい画家なのかもしれませんね。
【参考書籍】
・村上博哉 訳『岩波 世界の巨匠 ボナール』 (株)岩波書店 1994年
・ジュリアン・ベル 著/島田紀夫・中村みどり 訳『ボナール』 西村書店 1999年
・早坂優子『巨匠に教わる 絵画の見かた』株式会社視覚デザイン研究所 1996年
10分でわかるアートとは?
「10分でわかるアート」は、世界中の有名な美術家たちや、美術用語などを分かりやすく紹介する連載コラムです。
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