アートセンターをひらく 2023-地域をあそぶ/水戸芸術館

新たな「何か」は「アートセンターをひらく」ことで生まれる【水戸芸術館現代美術ギャラリー】

2023年8月10日

アートセンターをひらく 2023ー地域をあそぶ/水戸芸術館 現代美術ギャラリー

1990年、水戸市制100周年を記念して開館した複合文化施設「水戸芸術館」。

館内には、コンサートホールATMやACM劇場、現代美術ギャラリーの3つの独立した施設があり、それぞれが自主企画による事業を展開しています。

また、地域の文化活動の拠点として、市民と連携してプロジェクトを実施するなど、その活動は多岐にわたります。


水戸芸術館 入口のようす

敷地内には、同館のシンボルとして建てられた塔もあります。

市制100周年に合わせて、塔の高さも100m

地上86mにある最上部の展望台へは、ガラス張りのエレベーターに乗り、内部を見ながらのぼることができます。


水戸芸術館シンボルの塔

そんな水戸芸術館現代美術ギャラリーでは、展覧会「アートセンターをひらく 2023ー地域をあそぶ」が開催中です。

ここでは同館を中心に、街中と連携した本展の見どころを解説します。

アートが生まれる場「アートセンターをひらく」第2弾開催!

水戸芸術館現代美術ギャラリーは、作品の収集や保管よりも、展覧会プログラムなどの自主企画に重点を置いているという特徴があります。

2019年に第1弾として開催された「アートセンターをひらく」は、ギャラリーをアーティストによる創作の現場へと開くなど、創作と対話が大きなテーマでした。

今回の第2弾「アートセンターをひらく 2023ー地域をあそぶ」では、7月2日に新たに開館した水戸市民会館の完成を祝い、「地域」と「あそぶ」が大きなテーマになっています。

本展では、現代美術ギャラリーを「展示と鑑賞」に加えて「アートが生まれる場」として捉え、アーティストはもちろんのこと、地域の人びとの創造性が引き出されるような、創作と交流が楽しめる場を設けています。

展示室は全部で9室。見どころを紹介

工作や手芸の道具、さらには図書コーナーを備えた第1室「ひらくの間」では、小さな子どもがのびのびと創作を楽しめるよう、お絵描きコーナーなどが用意されています。


第1室「ひらくの間」展示風景


第1室「ひらくの間」本のコーナー 展示風景

第2室から第5室までは、「地域」と「あそぶ」をキーワードに、同ギャラリーのコレクション作品を展示しています。


第2室 展示風景
(手前)曽根裕《19番目の彼女の足》1993年


第3室 展示風景
蔡國強《水戸風水龍派図》1994年

多くは、過去の展覧会やワークショップのために制作されたものです。

展示を通して、同館の「創作のアーカイブ」として紹介しています。


第4室 展示風景
ヂョン・ヨンドゥ《マジシャンの散歩》2014年


第5室 展示風景
ゲルダ・シュタイナー&ヨルク・レンツリンガー《美の論理》2012年

第6室は、「3人寄ればブカツの提案ができる」をルールに、美術館を拠点にした市民主導の対話と創作のプログラム「部活動」や美術家・曽谷朝絵さんによるインスタレーション作品《鳴る色》を楽しめます。


曽谷朝絵《鳴る色》 18:00~22:00 点灯

第7室では、日本とインドネシアを拠点に活動するアーティスト・コレクティブ(芸術家集団)KITAによる展示「KITAの間」を紹介。

そして、続く第8室では、プロジェクト「続・水戸空間診断」が展示されています。

本プロジェクトは、2004年当時の筑波大学貝島研究室とアトリエ・ワンが行った水戸の中心市街地のリサーチを18年ぶりに追跡調査したもので、水戸の街の変化をとらえています。


第8室 「続・水戸空間診断」展示風景
一ノ瀬彩・久野靖広・稲用隆一(茨城大学大学院理工学研究科都市システム工学専攻)+山田協太・加藤研(筑波大学芸術系)+茨城大学・筑波大学学生有志/監修:貝島桃代(アトリエ・ワン、ETHZ) /アドバイザー:平井政俊(平井政俊建築設計事務所)

最後の第9室では、remo[NPO法人 記録と表現とメディアのための組織]による、「ホーム・ムービング!水戸の風景と生活をめぐるアーカイブ」が紹介されています。

昭和30年~昭和60年にかけて一般家庭に普及した動画メディア「8ミリフィルム」に残された、当時の水戸の風景を映像で楽しめます。


第9室 remo [NPO法人 記録と表現とメディアのための組織] 展示風景

人と人、人と地域をつなぐ「MitoriO」3館連携プロジェクト

展示や鑑賞の場としてだけでなく、幅広い層の人びとが創作を楽しめる本展。

同館だけでなく、隣接する2館(水戸市民会館・京成百貨店)との連携プロジェクトも実施中です。


水戸市民会館 外観

この3館は総称して「MitoriO(ミトリオ)」と呼ばれており、今後、水戸の賑わいの拠点になることが期待されています。


MitoriO 案内図

連携プロジェクトとして、この3館を、曽谷朝絵さんによる色彩と光あふれるパブリックアートで繋いでいます。

光や角度、時間帯によって表情を変えるので、何度訪れても楽しめることでしょう。


曽谷朝絵《鳴る色》 京成百貨店 Afternoon Tea TEAROOM 10:30~19:00
※店休日:8月23日(水)、9月13日(水)、10月4日(水)


曽谷朝絵《雨色》 水戸市民会館 2階・こどもギャラリー 

そのほかにも、朝顔を育てることを通じてコミュニティを育む、日比野克彦「明後日朝顔プロジェクト2023水戸」が3館連携展示として鑑賞できます。

また、「茨城県信用組合ローンセンター水戸」や「はなそう」でも、remoによる展示(※)がありますので、こちらも合わせて訪問してみてください。

※茨城県信用組合ローンセンター水戸(水戸市泉町1-1-1)/16:30~22:00、はなそう(水戸市南町1-4-22 シンヤ寒梅館1階101)/7:00~22:00 どちらも外からご覧ください。

 

「地域」と「あそぶ」をテーマに、コレクション作品展示のみならず、地域団体や市民と協働してきたプロジェクトの紹介など、幅広い世代が楽しめる場となっている本展覧会。

アートを生み、自ら創作も楽しみ、地域とつながる。来館する一人ひとりが、アーティストたちと一緒に展示を作っていくのだと感じました。

この夏と秋は、水戸芸術館現代美術ギャラリーで、アート鑑賞や創作を楽しんでみてはいかがでしょうか。

Exhibition Information

展覧会名
アートセンターをひらく 2023-地域をあそぶ
開催期間
2023年7月22日~10月9日 終了しました
会場
水戸芸術館 現代美術ギャラリー
公式サイト
https://www.arttowermito.or.jp/