夢二が見つめた1920年代/竹久夢二美術館

モダンガールの流行は震災復興から始まった!【竹久夢二美術館】

2023年8月28日

夢二が見つめた1920年代 -震災からモダンガールの表現まで-/竹久夢二美術館

大正ロマンのノスタルジックな世界観が好きで、モダンガールに心惹かれる人はきっと多いはず——そんな当時の女性を題材とした美人画で有名な竹久夢二には、実は社会派の一面もあったことをご存じでしょうか。

「夢二が見つめた1920年代 -震災からモダンガールの表現まで-」は、夢二が関東大震災を取材したスケッチやコラムから当時の社会を知ることができるとともに、震災後の復興の最中で流行したファッションや文化にも触れられる展覧会です。

二部構成で、モダンガールがどのようにして生まれたのかを時代の流れから紐解いています。


竹久夢二とは?

竹久夢二(1884-1934)は明治後期にデビューした作家で、画壇には属さずに活動をした人物です。

色白で曲線的な肢体や憂いのある表情の「夢二式美人」と呼ばれる美人画で人気を博しました。

絵の他には詩や文章、デザインなども手がけています。

竹久夢二美術館の魅力


竹久夢二美術館 外観

夢二の作品を集めた竹久夢二美術館は、東京都文京区の静謐で緑豊かな界隈にあります。

かつては併設する弥生美術館で創設者・鹿野琢見(1919-2009)の夢二コレクションを所蔵していましたが、その豊富さや人気の高さから館として独立するまでに至りました。

平成2年(1990)11月3日に開館し、都内では夢二作品を鑑賞できる唯一の美術館です。

併設の弥生美術館では、大正ロマンがテーマの企画展や少女漫画などを題材にした展覧会を多く開催し、趣ある美術館建築ともマッチする昭和レトロやガーリーな世界観は魅力的です。

絵はがきや雑貨などの夢二グッズなどが買えるショップ、オリジナルのブレンドコーヒーや軽食を楽しめる「夢二カフェ 港や」もあり、展覧会ごとの限定メニューも必見です。


展覧会特別メニュー「巴的岌希」(ハットケーキ)
単品 650円/珈琲か紅茶とのセット 1,000円(いずれも、税込)

「夢二が見つめた1920年代」展の見どころ

本展では1920年代という時代に焦点を合わせ、関東大震災の発生から復興後にモダンガールが登場するまでの流れを紹介しています。

大正から昭和へと移りゆく1920年代は、近代化が急速に進んだ時代です。

関東大震災を追ったルポルタージュ

前半では、夢二の関東大震災にまつわるスケッチやエッセイなどを展示しています。


展示風景より

夢二は都新聞(現在の東京新聞)でルポルタージュ「東京災難画信」を連載し、リアルな被災状況や人びとの暮らしぶりを描きました。

当時は夢二も自宅が被災し、好んで絵を描いていた下町エリアは火災も発生し、文京区も大変な被害状況に見舞われていたそうです。


展示風景より


展示風景より

「東京災難画信」は風景だけではなく人びとを積極的にスケッチしたことが特徴的で、中でも夢二が女性や子どもに向けていたまなざしが感じられます。

震災から1年近く経った後も取材活動を続け、復興を長く観察し表していました。

また、被災地では人びとの心を慰めるために音楽コンサートや野外劇などが積極的に行われ、慰安を目的としたスケッチ展には夢二も作品を出品しました。


竹久夢二《宵待草》大正13年(1924年)竹久夢二美術館蔵

モダンガールのレトロで可愛いイラストが沢山!

後半はガラッと雰囲気が変わり、夢二の代名詞とも言える美人画はもちろん、当時のファッション雑誌の記事もみられます。


展示風景より

震災の壊滅的な被害から復興する過程で、西洋化・近代化が進んだことは、モダンガール誕生の契機にもなりました。

夢二が描いたモダンな女性像は、西洋のスタイルを参考としており、当時の日本女性のおしゃれにも影響を与えました。


(手前)竹久夢二《湖畔の秋》昭和2年(1927年)竹久夢二美術館蔵

また、夢二が描いた商業デザイン画も展示されています。

まだグラフィックデザイナーという言葉がない中で、企業が広告宣伝のために画家にイメージビジュアルを依頼するケースが増えてきたのがこの時代の特徴です。

個性的な夢二のフォントやアール・デコをモチーフにした色使いを楽しめる作品は、デザイン好きの人にもおすすめです。


展示風景より


今も有名な老舗「千疋屋」の広告デザインにも夢二は携わっていた。

弥生美術館とセットで鑑賞もおすすめ


『いとしのレトロ玩具 ――もう逢えないと思ってた、がここにある――』展示風景より

竹久夢二美術館のチケットがあれば、お隣の弥生美術館も一緒にみられます。

弥生美術館で開催中の「いとしのレトロ玩具」展は、昭和レトロを感じられる日本の懐かしくて愛らしい玩具を展示。

みる人を楽しませます。こちらもお見逃しなく。

1920年代を「震災」と「モダンガール」を展示で紹介しているところが本展のみどころ。

夢二の社会派の一面や、モダンデザインの先駆者であったことがわかります。

現代もコロナ禍で社会が一変し、天変地異は他人事ではない今だからこそ、100年前の人びとに共感できる部分もあるかもしれません。

Exhibition Information

展覧会名
夢二が見つめた1920年代 -震災からモダンガールの表現まで-
開催期間
2023年7月1日~9月24日 終了しました
会場
竹久夢二美術館
公式サイト
https://www.yayoi-yumeji-museum.jp/