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2024年11月1日
北欧の神秘/SOMPO美術館
マルクス・ラーション 《滝のある岩場の景観》 1859年 スウェーデン国立美術館
SOMPO美術館(東京・新宿)にて、展覧会「北欧の神秘─ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画」が、6月9日(日)まで開催中です。
北欧の神秘
本展覧会は、北欧の中でもノルウェー、スウェーデン、フィンランドの3か国に焦点を定め、19世紀から20世紀初頭の国民的な画家たち…
SOMPO美術館 | 東京都
2024年3月23日~6月9日
洗練されたデザインのインテリアや雑貨などで、日本でもよく知られている北欧。
その中でも本展では、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの3か国に焦点をあて、それぞれの国を代表する画家たちの選び抜かれた作品約70点を、序章を加え、4章構成で展示します。
これまでスポットの当たる機会があまりなかった「北欧美術」の知られざる魅力を紹介します。
序章展示風景より
ナショナリズムが高まる19世紀。
北欧の画家たちは、故郷の自然や歴史、文化に関心を寄せるようになり、北欧特有の気候や自然、神話などをテーマにした絵画を描くようになります。
左から、ヨーハン・フレドリク・エッケシュバルグ 《雪原》 1851年 ノルウェー国立美術館、ヨーハン・クリスティアン・ダール 《山岳風景、ノルウェー》 1848年 スウェーデン国立美術館
「ノルウェー絵画の父」と呼ばれるヨーハン・クリスティアン・ ダールや、19世紀半ばごろのノルウェーでもっとも成功した風景画家のひとりヨーハン・フレドリク・エッケシュバルグは、北欧特有の壮大な自然をドラマティックに表現しました。
ロベルト・ヴィルヘルム・エークマン 《イルマタル》 1860年 フィンランド国立アテネウム美術館
また大気の女神が世界を創造する場面を描いた《イルマタル》など、北欧の神話や民話にもとづく神秘的な世界を描いた作品も描かれるようになりました。
左から、ヴァイノ・ブロムステット 《初雪》 1896年 フィンランド国立アテネウム美術館 、ヴァイノ・ブロムステット 《冬の日》 1896年 フィンランド国立アテネウム美術館
北欧絵画の重要なテーマのひとつが自然です。
19世紀後半、ヨーロッパでは工業化と都市開発が進む一方で、自然への関心が高まるようになります。
広大な山々、シラカバなどの針葉樹林の広がる北欧。特に、白夜などの冬の光景は「北欧らしさ」を表現する手段としてさかんに描かれました。
エドヴァルド・ムンク 《フィヨルドの冬》 1915年 ノルウェー国立美術館
ノルウェーを代表する画家エドヴァルド・ムンクも、繰り返し冬の光景を描いています。
左から、ハルマン・ノッルマン 《雲の影》 1899‐1902年 、ニルス・クレーゲル 《ヴァールバリのホステン丘Ⅱ》 1896年 いずれも、スウェーデン国立美術館
スウェーデン独自の絵画を模索した「ヴァールバリ派」のひとりニルス・クレーゲルは、この作品のように幻想的で壮大な風景画を描きました。
19世紀末になると画家たちは、自分たちの文化的伝統に強い関心を抱くようになり、それぞれの土地に伝わる民話や伝承をもとにした作品を手がけるようになります。
こうした物語の舞台となった森は、芸術家たちのインスピレーションの源でした。
エーリク・ヴァーレンショル 《森の中の逃避》 1903年 スウェーデン国立美術館
ノルウェーの装飾芸術で知られるガーラル・ムンテ。
彼は、北欧神話を題材としたテキスタイル作品が高く評価され、ヨーロッパ全土に広まったアーツ・アンド・クラフツ運動にも参加しました。
ガーラル・ムンテ 《帰還するオースムンと姫》 など4点 1902-1904年 ノルウェー国立美術館
北欧の物語には、トロルという怪物がよく登場します。
ムンテが描いた本作を含むシリーズは、怪物トロルにさらわれた姫を、王の命で救い出す主人公・オームスンを描いたもの。
10点の絵画のうち、会場では4点が展示されています。
左から、テオドール・キッテルセン 《アスケラッドと黄金の鳥》 1900年、テオドール・キッテルセン 《トロルのシラミ取りをする姫》 1900年 いずれも、ノルウェー国立美術館
民間伝承をモチーフとした作品で、国民的画家となったテオドール・キッテルセンの作品にもトロルは登場します。
主人公の少年が危機を乗り越え、姫を救出するという冒険を描いた連作のうち、会場では3点を展示。
左は、主人公の少年が光り輝く黄金の鳥に出会う場面、右は姫が寝ているトロルの体のシラミを取っている場面が描かれています。
会場には、キッテルセンの作品をデジタルコンテンツで紹介するコーナーも。
没入感のある映像で彼の不思議な世界が楽しめます。
3章展示風景より
19世紀になり都市が発達すると、街の景観や都市での生活、日々の暮らしといった、同時代の風景が絵画に描かれるようになります。
また、なかには都市の貧困や病といったネガティブな側面に目を向けた画家たちもいました。
3章展示風景より
同時代の芸術家を経済的に支援したエウシェン王子は、スウェーデンのロマン主義を代表する風景画家としても活躍。独特の雰囲気のある画風で都市の風景を描きました。
左から、エウシェン王子 《初冬の朝》 1906年 あるいは 1907年、カール・ノードストゥルム 《スカンセンからのストックホルムの眺め》 1889年 いずれも、スウェーデン国立美術館
パリへ留学したカール・ノードストゥルムは、印象派の影響を受けた数少ない北欧画家のひとり。
彼とエウシェン王子は、ともに工業化の象徴として煙を出す工場を描いています。
エドヴァルド・ムンク 《ベランダにて》 1902年 ノルウェー国立美術館
フィヨルドを遠くに眺める2人の女性を描いた《ベランダにて》。
緑の草原に木々の明るく鮮やかな色が映え、ムンクの優れた色彩感覚がうかがえる作品です。
ミュージアムショップでは、展示作品をモチーフにしたトートバッグやマグカップ、Tシャツ、ノートなど、魅力的なアイテムが多数用意されています。こちらも要チェックです。
展示作品には怪物、妖精、英雄、魔力の宿る森などのモチーフが多く登場し、神話やファンタジーが好きな方ならきっと楽しめる展覧会といえるでしょう。一部の作品は写真撮影も可能です。
また今回SOMPO美術館初めての試みとして、森の風の音、鳥のさえずりなど展示作品をイメージしたサウンドを会場内に導入。絵と音のコラボレーションで、絵画の世界に入り込むような鑑賞体験が楽しめます。
19世紀から20世紀初めの北欧美術が、これほどの規模で日本で紹介されるのは今回が初めて。
この貴重な機会に北欧ならではの神秘的な世界に触れてみてはいかがでしょうか。