巨匠ハインツ・ヴェルナーの描いた物語(メルヘン)/愛知県陶磁美術館

カップやプレートに広がるメルヘンの世界【愛知県陶磁美術館】

2026年6月18日

カップやプレートに広がるメルヘンの世界【愛知県陶磁美術館】

美術館外観

千年ものあいだ途切れることなく陶磁器を生産してきた「やきものの町」瀬戸市に建つ愛知県陶磁美術館

縄文土器から現代アートまで世界の陶磁器コレクション約8,700点を収蔵・展示する世界最大級の陶磁専門ミュージアムです。

5月30日から開催されている特別展は、現代マイセンを代表する巨匠のハインツ・ヴェルナー特集。繊細で美しい陶磁器の名品が並ぶ、西洋陶磁器好き必見となる展覧会です。

ヨーロッパの名窯 マイセン


展覧会看板

西洋陶磁器と言えば真っ先に名前が挙がる、日本でも大人気のブランド「マイセン」。ヨーロッパで初めて硬質磁器を生みだしたドイツの名窯です。

1710年の開窯以来300年以上の歴史を誇るマイセンですが、この展覧会では1960年代以降の「現代マイセン」にスポットを当てています。


《エルザ》フィギュリン 1974年頃 個人蔵

会場に入ってすぐ正面にて迎えてくれるのは陶磁器で作られた人形、フィギュリン『エルザ』。その大きさと繊細な造形に圧倒されます。

マイセンは柿右衛門の写しから始まった

マイセンは17世紀に日本の有田で誕生した「柿右衛門様式」を手本にしたことをご存じでしたか。

東洋の白い磁器は、ヨーロッパ王侯貴族の憧れの的。ヨーロッパでも白磁を制作しようと躍起になっていた中、最初に開発に成功したのがマイセンです。


(左)《色絵花鳥文貝殻形皿》1740-50年 個人蔵
(右)《色絵柴垣葡萄栗鼠図葉形皿》18世紀中頃 個人蔵

柿右衛門が並んでる・・・と見ていたら、マイセンの柿右衛門写しでした。

色も形も柿右衛門だけど、どことなく軽やかで西洋が感じられるのがなんとも興味深い。

現代マイセンの巨匠・ハインツ・ヴェルナー


(左)《エンゼルフィッシュ》花瓶 1958年 個人蔵 (右)《森と動物たちの絵》プレート 1958年頃 個人蔵

現代マイセンの巨匠ハインツ・ヴェルナーは、1943年、15歳でマイセン養成学校に入学しました。厳格な教育を受け、1950年代には絵付師として認められます。

当時、ドイツはまだ戦後の混乱の中。社会主義国家の東ドイツに位置していたマイセンは国営化され、貴重な外貨を獲得する輸出企業として重要な位置を占めていました。

1960年、創立250周年を迎えたマイセンは復興を目指して「芸術の発展をめざすグループ」を結成し、5人のアーティストたちが新たなデザインに取り組みます。

ハインツ・ヴェルナーはその一員となって、マイセンの新しい黄金期を創り上げたのです。

物語をモチーフにした
ヴェルナーの名シリーズ


《ミュンヒハウゼン「ほら吹き男爵」》コーヒーサービス 1964年 個人蔵

ヴェルナーは物語からインスピレーションを得た作品を次々と発表します。

ミュンヒハウゼン男爵の冒険談『ほら吹き男爵の冒険』の物語をモチーフにコーヒーサービスに描きました。

鮮やかな黄色が目を惹きます。ヴェルナーは、マイセンの伝統カラーである黄色を現代に昇華しました。現在ではこのような深い黄色は再現できないそうです。


《サマーナイト》ティーサービス 1969年(1974年以降制作) 個人蔵

シェイクスピア『真夏の夜の夢』のキャラクターが柔らかいタッチで描かれた、華やかなティーサービスです。とにかくかわいい!欲しくなること請け合いです。


《サマーナイト》ティーサービス 1969年 個人蔵

これは『サマーナイト』ティーサービスの別セット。幻想的な物語の世界を見事に表現した2体のフィギュリンが目を惹きます。人形のまつ毛まで、やきものなんです。

ハインツ・ヴェルナーの伝統を打ち破る表現力と、人形造形師ペーター・シュトラングの確かな技術力とが融合した逸品です。


《アラビアンナイト》コーヒーサービス 1966年(1974年以降制作)

こちらも人気シリーズ『アラビアンナイト』のコーヒーサービス。

金彩を効果的に使ったエキゾチックなデザインが魅力です。

晩餐会の会場⁈
壮麗なテーブルセッティング


素晴らしいテーブルセッティング

まるでどこかのお城の晩餐に招かれたような豪華なテーブルセッティング。

ヨーロッパ貴族が愛した「狩猟」をテーマに、ディナーサービスや、燭台が並びます。テーマに合わせたグラスや陶器のカトラリーも揃えられたという贅沢さです。


本展の特別協力者 勝川達哉氏ご夫妻

この素敵なセッティングは、日本有数のハインツ・ヴェルナー作品コレクターとして知られる勝川達哉氏ご夫妻の手によるもの。ハインツ・ヴェルナーとも親交があり、本展にも多くの作品を出展しています。

テーブルの端に置かれた「Welcome ご来場のみなさま」という心温まるプレートが、会場の雰囲気を和らげてくれています。

受け継がれるヴェルナーの世界


《ヴィジョン》コーヒーサービス 1990年 個人蔵

1980年代に入ると、ヴェルナーのデザインは具象を超えたものに変化していきました。

花や光を踊るような筆致で描き出しています。

マイセン引退後も、ヴェルナーは幻想的な作品を意欲的に制作しました。

その遺志はマイセンの若いアーティストたちに受け継がれ、現在のマイセンに宿っています。

カフェや作陶体験で
一日ゆっくり楽しめる美術館


カフェ&ギャラリー「Who are you たそかれ」オリジナルの陶片クッキーもおみやげにどうぞ

5月14日、館内に待望のカフェ「Who are you たそかれ」がオープン。瀬戸市のアーティストユニットBarrackが展開するカフェで、カレーや煮込みなどの週替わりランチやドリンクをご提供。

夏ごろにはカフェ内にギャラリーもオープンする予定だそうです。


カフェ&ギャラリー「Who are you たそかれ」にて

きれいな庭を臨む窓際のカウンター席でいただいたのは、果物のシロップジュース。たっぷり果実感があって優しい甘さは、館内を歩き回った体に染みわたるよう。おすすめですよ。

愛知県陶磁美術館は大学や文化施設が集積する愛知東部の文京地域にあって、その敷地も広大。隣接する「つくるとこ!陶芸館」では気軽に作陶や絵付けを体験することができます。

緑豊かな愛知県陶磁美術館でゆったりとした一日を過ごしてはいかがでしょうか。

Exhibition Information

展覧会名
巨匠ハインツ・ヴェルナーの描いた物語(メルヘン) ―現代マイセンの磁器芸術―
開催期間
2026年5月30日~9月27日
会場
愛知県陶磁美術館
公式サイト
https://www.pref.aichi.jp/touji/
注意事項

5月30日(土)~6月30日(火)9:30~16:30
7月1日(水)~9月27日(日)9:30~17:00
※いずれも入館は閉館の30分前まで