「複製される感性-森山大道」/東京都写真美術館

学生が選んだ森山大道作品約140点を展示📍東京都写真美術館

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2026年10月1日

森山大道の写真を、約50年離れた若者世代はどのように見るのでしょうか?

東京都写真美術館で、「複製される感性-森山大道」が2026年10月18日(日)まで開催されています。

本展のキュレーションを担当したのは、奈良女子大学工学部・長谷研究室の学生たち。森山の作品と向き合い、自分たちの感覚で選び、構成した約140点が展示されています。

デジタルとアナログが交差する展示室のようすと、見どころをレポートします。

「複製される感性-森山大道」とは?

森山大道のどの作品を、どのように展示するのか。

学生たちはまず、森山の作品集を見て、気になった写真にふせんを貼ることから始めました。

その後、なぜその一枚にひかれたのか、どの作品と組み合わせるのかを話し合いながら、展示作品を選んでいったといいます。

会場とデジタルの両方で楽しめる展覧会をつくるにあたり、森山本人とのやり取りも行われました。

世界的に活躍する写真家との率直なやり取りと、若い世代ならではの感覚が、今回の展示に生かされています。

タイトルに込められた「複製」の意味

写真は、同じイメージを何度も複製できるメディアです。

約50年前に撮影された写真も、写真集やプリント、デジタルアーカイブなどを通して、現在の私たちが見ることができます。

しかし、複製されるのは写真のイメージだけではありません。写真から受け取った感覚や記憶、当時のリアリティも、時代や世代を越えて新たな鑑賞者へと手渡されていきます。

本展には、森山の経歴や作品の変遷を詳しく説明する展示がありません。

知識から入るのではなく、まずは自分の目で見て、感じることを促す構成です。

「感性」で巡る展示室

展示室に並ぶ約140点の作品は、年代順ではありません。

写真の形や光、写された人物の視線など、学生たちが作品から受け取った感覚を手がかりに構成されています。

制作年代の離れた写真が隣り合い、会場を歩くことで写真同士の意外なつながりが見えてくるのも、本展の面白さです。

学生たちの視点をたどりながら、自分がどの写真に反応するのか。

鑑賞者自身の「感性」にも気づかされる展示となっています。

展示室3つの見どころ

見どころ①
森山が見た「ハワイ」の外側を想像する

森山がハワイで撮影した写真と、学生がAIを用いて制作した映像を組み合わせた展示です。

一瞬を切り取った静止画に対し、映像からは写真のフレームに写っていない周囲や、その前後の時間が想像されます。

ただし、映像はあくまでその先をほんの少し想像させる表現。森山作品へのリスペクトも感じられました。

学生との往復書簡の中で、森山はハワイを「もう一度訪れたい場所」として挙げていたそうです。その言葉を知ると、写真に残された時間も、少し違って見えてきます。

見どころ②
写真から浮かび上がる3つの視線

写真を「撮られる側」、「撮る側」の視線に加えて、「見る側」の視点を交差させた展示も。

カメラを構える森山の姿をアクリルミラーにプリントした作品と、森山が撮影した女性たちの写真を向かい合わせにしたこちらの展示。

展示をのぞき込むと・・・「見る側」である自分自身が写り込みます。

その瞬間、展示の外側にいたはずの自分も「鑑賞者」として、作品の関係の中に加わります。

見どころ③
東京を組み替える《TOKYO CUBE》

森山が東京のさまざまな場所で撮影した写真を、立体パズルに再構成した《TOKYO CUBE》(2026年)も印象的です。

撮影された「東京」の写真は分解され、また新たに配置されることで元の写真にはなかった景色が浮かび上がります。

どの写真も「東京」であるはずなのに、存在しない景色。

実際にルービックキューブに触れ、絵柄を組み替えられるコーナーもあります。完成形を目指すのではなく、変化する東京のイメージそのものを楽しんでみてください。

このほかにも、印刷・複製した写真を再構成する作品や、光を使った展示など、写真を別の方法で捉え直す試みが紹介されています。

森山大道は若い世代の解釈をどう受け止めた?

本展のキュレーションを指導した奈良女子大学・長谷圭城教授にも、お話を伺いました。

長谷教授によると、森山は学生たちから寄せられた相談や提案に協力的だったそうです。

作者自身の解釈を正解として押しつけるのではなく、作品を次の世代へと開いていく姿勢。

その自由さが、約50年離れた学生たちによる新鮮な作品選定や展示方法につながったのかもしれません。

展示室の続きは「デジタル第二会場」へ

会場を鑑賞した後は、スマートフォンやパソコンからデジタル第二会場も楽しめます。実際に来館せず、デジタル会場のみを鑑賞することも可能です。


第二会場:3D都市モデル(デジタル展覧会)TOKYOスマート・カルチャー・プロジェクト「複製される感性-森山大道」 企画・制作:清水岳、瀬賀未久、特別協力:奈良女子大学 長谷研究室

印刷された写真と、スマートフォンの画面に表示された写真。同じイメージでも、見る場所や大きさが変われば、受け取る印象も変化します。

来館前の予習としてはもちろん、鑑賞後に作品を振り返り、会場との見え方の違いを比べてみるのもおすすめです。

入場無料だからアート初心者にもおすすめ

本展は無料で鑑賞できます。

森山大道について詳しく知らなくても、作品の年代や意味をすべて理解する必要はありません。人物の表情や光、形など、自分が気になるものから自由に見ていけば大丈夫です。

特に若い世代や学生、普段あまり写真展へ行かない人にとっても、気軽に足を運びやすい展覧会です。まずは会場で、自分だけの一枚を探してみてください。

Q&A

Q.どんな展覧会ですか?

森山大道の写真を、奈良女子大学の学生たちが自分たちの感覚で選び、構成した展覧会です。

年代順ではなく、写真同士のイメージや感覚的なつながりを生かした展示を楽しめます。

Q.森山大道を知らなくても楽しめますか?

はい。写真の意味や撮影年代を覚える必要はありません。

気になる人物や光、形などを手がかりに、自分の感覚で作品を見ることができます。

Q.美大生が企画した展覧会ですか?

展覧会を企画したのは、美術大学や写真学科ではなく、奈良女子大学工学部の学生たちです。

専門知識にとらわれない、若い世代の日常的な感覚が展示に生かされています。

Q.入場料はいくらですか?

本展は無料で鑑賞できます。ただし、東京都写真美術館で開催されているほかの展覧会は、別途観覧料が必要な場合があります。

まとめ|50年前のリアリティを、今の感性で見る

写真が撮影された時代を知らなくても、その光や人物の表情に引きつけられることがあります。

TOKYOスマート・カルチャー・プロジェクト 奈良女子大学 長谷研究室「複製される感性-森山大道」は、森山の作品について学ぶだけでなく、約50年前の写真を前にした自分が何を感じるのかを確かめる展覧会です。

学生たちの視点をたどりながら、あなたの感性に残る一枚を探してみてはいかがでしょうか。

@Daido Moriyama Photo Foundation