風刺画/10分でわかるアート
2023年3月29日
千変万化する恋/早稲田大学坪内博士記念演劇博物館

ユーモアのある恋愛をテーマした喜劇映画のジャンル「ロマンチック・コメディ」を紹介する展覧会が、早稲田大学演劇博物館で開催中です。
本展では、同館が所蔵する多彩な資料を中心に、日本のロマンチック・コメディ映画の変化の軌跡を紹介します。

本展では、日本のロマンチック・コメディの移り変わりを8章に分けて紹介しています。
その歴史は、とても興味深いもの。展示をじっくりと鑑賞すると、時代の中でどのような「恋」が世間で好まれていたのかなどが見えてきます。

例えば第1章では、近代国家として出発した日本で、理想とされた恋を描いた「新婚もの」について紹介しています。
新婚ものとは、新婚夫婦を主人公とする戦前のロマンチック・コメディのこと。
夫が外で働き、妻が家事や育児を担う性別役割分業型の家族をモデルとした物語を描いています。
また、まだ子どもを持たない新婚期のみを切り取り、結婚生活の中で育まれる「感情」も表現しています。
しかし、この理想とされた家族モデルは、敗戦後には前近代的なものとして否定されます。
「愛」という私的な領域が、いかに政治的になり得るかを検証する展示もあります。

1937年の日中戦争以降、国家総動員法の下で人びとの私生活は国家の統制下に置かれました。
映画も1939年の映画法制定により、国策遂行の装置に。スクリーン上の恋の姿も、男女のロマンスは軟弱なものとして退けられてしまいます。
代わりに、戦争遂行に求められる「英雄的な男性性」が支持され、男性同士の絆を描いた作品が多く制作されました。
また、植民地の女性が日本人男性に教化される物語も作られ、愛の表象は「大東亜共栄圏」の正当化に利用されました。

2003年にNHKで放送された「冬のソナタ」以降、韓国、中国、台湾のドラマ・映画は日本社会に深く浸透しました。
また日本の漫画を原作とするリメイクや、配信プラットフォームを通じた同時期視聴の一般化により、ロマンチック・コメディは、国境を越えた共通のエンターテインメントとなっています。
本展では、ロマンチック・コメディがどのように世界的な広がりのなかで受け入れられ続けているかについても、紹介します。

ロマンチック・コメディから、時代によって変わる文化や価値観を紐解く「千変万化する恋」展。
早稲田大学演劇博物館は、無料で気軽に入れるミュージアムです。
ぜひ足を運んでみてくださいね。